Apple社が新型「iPad Pro」のコマーシャルとして公開した動画が、
「不適切だ」として批判を浴び、謝罪に追い込まれる事態になっています。
巨大なプレス機で、ゲーム機や楽器、美術品など様々な物が潰されていき、
最後はすべてを破壊。
完全に圧縮しきったプレス機がゆっくりと上昇を始めると、
圧縮されたゲーム機や楽器、美術品などが、
薄さわずか5.1㎜の「iPad Pro」に変化し、プレス機から現れるという動画です。
「潰される様子が破壊的」と批判が相次ぐ
今回のコマーシャル動画は、
「新型のiPad Proには様々なクリエイティブツール機能が搭載されている」という事を表現しようとしたのですが、
これが日本国内のみならず、アメリカ国内でも大きな火種となりました。
物を大切にする日本人からもネット上で批判の声が相次いでいるほか、
Apple社のCEOティム・クック氏のXポストには世界中から2万件近いコメントが寄せられ、
その多くが批判的なコメントになっています。
破壊系の動画に潜む人間の心理
結局のところ、今回の「プレス機動画」への批判は
「見慣れない光景に驚いた人達の反応」ではないでしょうか?
実は、インスタグラムの「リール動画」やYouTubeの「ショート動画」では、
この「プレス機」を用いた「物を潰すだけの動画」は世界的に非常に人気が高く、
複数のアカウントやチャンネルが「物を潰すだけの動画」を配信しています。
視聴回数は、多いもので1動画あたり6,300万回以上再生されており、
多くの日本人YouTuberもこのジャンルに参入。
物を潰すだけの動画(日本語の動画)で100万回以上再生される動画もザラに存在します。
(昔は音楽CDが100万枚売れたら、国民のほとんどがその歌手を知っているって感じでしたよね?笑)
つまり、この手の動画をついつい見てしまう人たちからすると、
新型iPad ProのCM動画は「さほど嫌悪感が無い動画」なハズなのです。
何も考えず、無心で見ていられるから
そもそも、なぜプレス機で物を潰すだけの「単純な動画」がそれほど人気なのでしょうか?
近年、「ASMR」や「~するだけの動画」「ずっと見てられる動画」など、
特に難しい編集などをせず、淡々と一つの事象が続く動画の再生数が高い傾向にあります。
「無心で聞いていられる」「無心で見ていられる」動画に人気があり、
・チョコレートが溶けていくだけの動画
・機械が野菜を高速で輪切りするだけの動画
・産業用シュレッダーで粗大ごみが粉々にされる動画
・大量のドミノが連続して倒れ続けるだけの動画
など、
無機質かつ単純なシーンがウケており、それに加え
「今まで見た事が有りそうで、見た事が無いシーン」という要素が加わると
「無心で見てしまう」動画になるわけです。
無心で見てしまう心理を利用出来ないか?
この「無心で見てしまう心理」を上手く活用した商品、
実は既に身の回りに存在しませんか?
例えば、高速道路のサービスエリアにあるこの自販機!
引用元:トーヨーベンディング(株) Instagram
そう!
ボタンを押すと、注文したコーヒーが出来るまでのシーンをモニターに映してくれる、
あの自販機 トーヨーベンディング(株)の「ミル挽き珈琲 アドマイヤ」です!
高速のSAでカップのコーヒーを買った経験がある方なら、一度は目にしているあの自販機です。
国内ではトーヨーベンディング(株)の様々な自販機が全国1,800ヵ所以上に設置され、
特にも「ミル挽き珈琲 アドマイヤ」は同社の大ヒット商品です。
運転で疲れた時、ついつい飲みたくなるコーヒー。
そのコーヒーが出来上がるまでの間に、
自販機の中でコーヒーが作られる様子を「無心で見てしまう」人も多いのではないでしょうか?
あくまで主観ですが、
あの自販機は「美味しさ」や「映像を映す斬新さ」に加えて、
「無機質な動画を無心で見てしまう心理」を上手く利用した成功例だと思っています。
自販機でコーヒーが出来るまで時間は、退屈だったり、人によってはイライラしたりと、
「無駄を感じやすい時間」でした。
一時期、コーヒーが出来上がるまでの間に「CM」をモニターで流していた自販機がありましたが、今ではほぼ見なくなってしまいました。
結局、「無駄を感じやすい時間」にCMを流してもウケなかったのでしょう。
トーヨーベンディング(株)の「ミル挽き珈琲 アドマイヤ」は
「無駄を感じやすい時間」と「無機質な動画を無心で見てしまう心理」を上手く掛け合わせる事に成功し、利用客の心を掴んだのではないでしょうか?
この心理には無限の可能性が有る?
現在、街中や電車の中で目につきやすい動画と言えば、そのほとんどが「従来型のCM映像」だと思います。
興味がある内容であれば見入る事はあっても、そうでなければただの「退屈な動画」です。
今回の「新型iPad Pro」のCM動画は、
「無機質な動画を無心で見てしまう心理」を利用しようとしたのかもしれません。
運悪く集中砲火を浴びてしまいましたが、このCMは人間の心理を上手く利用した作品であった可能性が有ります。
「コマーシャルのみならず、様々なシーンでこの心理は利用できるのではないか?」
「だとすると、モニター付きの媒体には無限の可能性があるのでは!?」
そんな事を考えさせられる今回のプレス機動画騒動でした!